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アイデアソン

2019.03.29

第9回アイデアソン 株式会社先端バイオ医薬研究所CEO 石川 貴大 様

株式会社先端バイオ医薬研究所
CEO 石川 貴大 氏
株式会社先端バイオ医薬研究所
CEO 石川 貴大 氏

2019年2月20日(水)、株式会社先端バイオ医薬研究所CEOの石川貴大様をゲストスピーカーにお迎えし、第9回アイデアソンを開催しました。

【ゲストプロフィール】

東京理科大学基礎工学部生物工学科卒業後、横浜市立大学大学院医学研究科へ進学。2002年、日本初のBtoCの遺伝子解析会社「株式会社ディーエヌエーバンクリテイル」を設立。2004年、沖縄県うるま市に研究所を開設し、がんなどの疾病関連の遺伝子研究を進める。2015年11月、株式会社先端バイオ医薬研究所を設立し、がん遺伝子治療の技術提供を開始。

先端バイオ医薬研究所とは

2015年に院内ラボを独立させる形で設立。遺伝子治療研究、再生医療研究、レーザー治療研究の3つを軸に事業展開をしています。現在は日本国内70カ所以上の病院やクリニックに対して、がん遺伝子治療の技術提供とサポートをしています。

医療インバウンドとアウトバンド
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治療、検診、美容・健康・予防といった医療サービスを受けることを目的に他国へ行くことを「医療アウトバウンド」、その逆を「医療インバウンド」と言います。国民皆保険制度が充実している日本ですが、脳死判定の基準の違いから、臓器移植手術を必要とする患者が海外での手術を希望し渡航しているケースが多く、日本は医療アウトバンド費用が医療インバウンド収入を上回っているのが現状です。

しかし、世界的に見ても日本の医療現場は設備や機器、環境が整っていて、手術は世界のトップレベル。診察は正確、丁寧、公平。看護師をはじめとする医療スタッフの対応もとても親切で、医療インバウンドのポテンシャルは十分にあります。実際、がん・難病治療、美容・予防医療、検診を目的に訪れる外国人は年々増えています。

外国人患者の受け入れにあたっては、医療ツーリズム会社や個人エージェントといったコーディネーターが、患者のカルテを現地の医療機関から取り寄せ、日本の受け入れ医療機関と共有する他、医療通訳士の手配、日程調整などを行います。さらに患者家族が待機するための別室の確保、家族の観光手配などのアレンジ、治療費の支払い代行、治療・検査結果の翻訳手配、次回来日の調整などのフォローを行います。

海外の医療インバウンドの取り組み
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タイは、美容や健康増進に特化した医療を強みとし、2015年にはアジア1位の約280万人の誘致に成功しています。タイに次いでシンガポール約100万人、マレーシア約80万人と続く一方、日本は2009年に新成長戦略を掲げ、医療ツーリズムに注力しているものの縦割り行政の弊害から2020年予測値でも僅か43万人に留まっています。

海外には「ウェルネスラグジュアリー」を売りとしたメディカルリトリートが多数存在し、富裕層が長期休暇の際に旅行を兼ねて訪れています。ドイツには厳格なパーソナル食事メニューで消化器をデトックスするプログラムを受けられる医師常駐のホテルがあったり、ギリシャではプライベートボートの船上でヨガを楽しみ、施設ではピラティスセッションを受けられるエーゲ海ツアーがあったりします。そしてタイには伝統的なアーユルベーダをはじめとする総合的なケアを受けられるホテル、ドバイには桁違いにゴージャスな空間で施術を受けられるホテルなどがあります。

自由診療の可能性

日本は国民皆保険制度の下、患者は一定の負担割合で高いレベルの医療を受けることができます。これを保険診療と言います。しかし、先端医療など国の承認がない医療は、保険診療の適用範囲外となります。保険診療で認められていない医療も全額自己負担であれば受けることができます。これが自由診療と呼ばれるものです。

自由診療の枠組みであれば、患者の同意の上、医師はあらゆる医療行為を行うことが可能です。海外での承認薬を輸入することや未承認薬を製造することも可能なのです。一方、海外は日本のような国民皆保険制度が無く、保険診療と自由診療という概念がありません。その為、医師は国に許可された医療行為の範囲内でしか医療行為を行えません。医師に裁量権が全面的に委ねられている日本の自由診療は、世界でも類い稀な制度であり、上手く活用することで医療以外のサービスを含めた総合的な医療ツーリズムを設計することができ、外貨獲得の手段として大きな期待が寄せられています。自由診療にこそ医療インバウンドの可能性があります。

これからの医療インバウンド

医療インバウンドを推し進める上での壁として、「文化」、「言葉」、「スタッフ」、「コーディネーター」が挙げられます。日本人と外国人では、当然、文化や言葉が異なります。それぞれの文化への理解、そして医療通訳人材や医療スタッフの育成が必要となります。また、質の高いコーディネーターが不足していることから資格制度の導入も一案です。

以前は医療インバウンドの中心はメディカルリトリートでしたが、最近は検診や美容医療がトレンドです。検診や美容医療は、滞在期間中に観光を楽しむ余裕があり、付き添いとして家族が同行するケースも多くあります。そうした需要に上手く応えていくことが求められています。

先行する海外勢に設備の豪華さでは太刀打ちできないので、検診や美容などの高度な医療機器、そしてきめ細やかなホスピタリティで日本は勝負するべきです。古都や自然、伝統文化など多様な観光資源、そして和食をはじめ世界最高峰のレストランの存在は大きな日本の強みです。この強みを活かして、日本だからこそ提案できる医療ツーリズムを作り上げていくべきです。そのためにも医療機関のみでなく、VIPのツアー会社、保険会社、ファイナンス企業などの異業種との連携、医療の広告規制から外れた総合的な医療ツーリズムを広く認知するためのプロモーション、そして優秀な海外コーディネーターとの連携が重要となってきます。

さいごに

質疑応答の時間では医療業界の実態や起業の動機などについての質問が寄せられ、石川氏にお答えいただきました。

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